中井 豊 | 岡田 勇 | 猪原 健弘 |
歴史に方程式はあるのでしょうか。西洋では、ヘーゲルの自由の増進、マルクスの資本の増殖のように、歴史の中に何らかの必然性を見出そうとします。一方、東洋では、歴史を万物の関わり合いが生み出す生々流転の過程とみなします。そして現在、計算社会科学では、歴史のダイナミズムを進化論的視点で理解するチャレンジが進んでいます。つまり、何らかの必然性の下、偶然生まれた考え方やルールが人々の関わり合いの中で生き残ることで社会が生まれてきたのではないか。そして、本講座では、この必然性として社会的ジレンマに注目します。利己的な個人が勝手気ままに振る舞えば社会は生まれないはずですが現実には社会は存在しているわけで、このジレンマがどう解決されるかは、社会科学の根本問題の一つとされます。中井は、このような視点で、国民と国家の創発を担当します。また、本講座の最後に、これから国民・国家・市場以外の新しい舞台が生まれてくるのか、近未来の社会を洞察する機会を設けました。岡田先生共々、さまざまなリアリティをお持ちの皆様との議論を楽しみにしております。そして、我が国最高峰の理系総合大学ならではの「面白い社会科学」を目指してまいります。
【略歴】
2003年 東京工業大学大学院社会理工学研究科・価値システム専攻、博士後期課程修了、博士(学術)
宇宙開発事業団主任開発部員、三菱総合研究所研究部長、芝浦工業大学教授を歴任
東京工業大学・リベラルアーツ研究教育院 非常勤講師
関西大学・ソシオネットワーク戦略研究機構・非常勤研究員
専門は数理社会学、ソーシャル・データ・サイエンス
日本学術会議・社会学委員会連携会員、日本社会情報学会理事、数理社会学会理事を歴任
Rationality and society、Scientific Reports をはじめ多くの国際学術誌に論文を掲載
オルテガは、教養(文化)とは混沌とした密林である生の全体に対する道標となるような諸理念の生きた体系である、と定義して教養の伝達こそ大学の使命であると主張しました。このたび中井先生、猪原先生からお誘いいただき、社会の進化論というわくわくするようなテーマに挑戦します。この講座は、様々な社会システムを進化の視点で説明しようという試みです。この講座の射程は社会科学全般ですが、今年は、国民と国家の進化論を中井先生が、そして市場の進化論を岡田が担当します。既存の学問が考えてきたことを進化や創発といった角度をつけて再構築することで、新たに見えてくることがあるかもしれない。そのアカデミックな興奮を共有できたらとの思いで準備を始めています。市場の成立には、権力などの強制力よりは、ステークホルダーたちの平等なウィンウィンの関係が重要です。その意味で進化論と相性が良いと考えています。どこまで市場の本質に迫れるか。オルテガ流の教養としての本講座を、現実社会の中を生きる社会人の皆様とともに構築出来たら幸いです。
【略歴】
2000年 電気通信大学大学院情報システム学研究科、博士後期課程修了、博士(学術)
電気通信大学助手、創価大学専任講師、同助教授を経て、2007年より現職
ウィーン経済経営大学暗号経済研究所客員研究員
社会情報学会理事、計算社会学会理事
専門は計算社会科学、社会シミュレーション、進化ゲーム、協力の進化
Journal of Artificial Society and Social Simulation 編集委員
Scientific Reports をはじめ多くの国際学術誌に論文を掲載
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院所属。専門の教育研究分野は意思決定、合意形成、紛争解決です。目標は、社会における意思決定問題をモデル化・分析し、私たちの生活に有用な、社会の振る舞いについての知識を獲得すること、および、そのようなことができる人材の育成です。
【関連Webサイト】 猪原健弘研究室