卒業生に聞くVALDES

VALDESで修士/博士課程を終え、社会の第一線で活躍している方々に、 VALDESについて、現在の仕事について、VALDESを志望しているあなたに向けて語っていただきます。

小松楠緒子さん

自分をうちまかす弟子を育てるのが目標!!

小松 楠緒子 さん
(明治薬科大学)

恩師今回先生のことば。これをきいたとき、"バルデスに来てよかった"と思いましたね。もともと型にはまるのはキライですから。このことば通り、のびのびと育ててもらいました。

バルデスに来たきっかけは"新聞"。コタツでのほほんと読んでたら、出てたんですよ、バルデスが。たった一行でしたけど。「新設大学院一覧」だったかな。みた瞬間電流がはしりましたね。"ここは自分が行く場所だ"と。思えば不思議な出会いです。

来てよかったことですか? 一流の息遣いを感じることができた点。バリバリの先生方が日々しのぎを削る姿に大いに刺激をうけました。研究の苦しさ、しかしそれを上回る楽しさがダイレクトに伝わってきましたね。意外とこういうことが大事なんじゃないかな。院は長いから弛緩してしまうんです(笑)。

今ですか? 薬大の教員をしています。D3で学位をとってすぐ、講師として就職しました。担当科目は、社会学、医療社会学、総合人文社会科学。"明るく楽しく元気よく"をモットーに講義しています。授業はライブですね。"ツカミはOK!!"みたいなノリで。ここでもバルデスの経験が生きてます。教案をつくるとき、脳内再生するんですよ。バルデスの名講義を。なかなかうまく真似できませんけど(苦笑)。もう習慣になってますね。

受験生にひとこと? 「自分のあとに道をつくれ!!」舗装された道が目の前にあるわけじゃないから、これくらいの気迫が必要かなあ、と。のびのびと勉強したいひとは是非、文理融合の海に跳びこんでください。

聞き手 中尾陽平(VALDES M1)

小柳津拓さん

チームの皆で協力

小柳津 拓 さん
(会計検査院)

学部の時は金属工学科に所属していました。その頃から社会問題に興味があり、公務員になりたいと考えていました。道路公団問題や諫早湾干拓事業など、なぜ財政赤字問題は膨らむ一方なのか、という問題に取り組みたいと思っていました。

VALDESを選んだのは、集団での意思決定をどのように決めるのが効率的か、を木嶋先生の下で学びたいと思ったからです。ここには様々な学問領域があるので、数理的判断だけでなく、他の分野も勉強できると思いました。

木嶋研では三鷹市の道路問題で、反対住民と行政側の対立の事例を研究しました。モデル化するための根拠として反対住民側と行政側にインタビューなどを行いました。紛争状態をどのように打破していくか。この疑問は今の仕事にも共通しています。会計検査院はお金ばかり見ているわけではありません。行政サービスが有効的に運営されているのかどうかの実地検査が必要です。

VALDESの魅力はみんなが集まって活動することです。研究の場合一人で進めることが多いのですが、社会に出たら協調性のある人が期待されます。交渉相手にも、仕事相手にも、いろいろな人がいて、協力していくことが必要です。一緒に仕事する人が25年、30年上だったりするわけで、「お前が生まれた時俺は仕事をはじめた」と言われると恐縮してしまいますね。

しかしVALDESには社会人のドクターが多い。専門が違う人からも話を聞くことができるし、ディスカッションプログラムなどで横の繋がりも強い。チームの皆で協力しながら意見をまとめて発表する、というスキルを勉強できるのが一番の魅力だと思います。

聞き手 藤本順子(VALDES M1)

石井渉さん

学ぶべきテーマを自ら見つける

石井 渉 さん
(日本総合研究所)

自分を高める可能性を求めてVALDESを受験しました。というのもVALDESには、多様な専門性を持つ人たちと研鑽しあうことで視野を広めつつ、研究室で自分の専門性を深められるという、この事実にしかない環境があるからです。実際に、学生主催の自主的な勉強会への参加を通じて、多様な専門性を互いに学びあうなかで、視野を広めることができました。専門性という点に関しては、修士論文のテーマである「行政評価と地方議会の関係」について、新宿区をケーススタディーに、区議会議員へのインタビューとアンケートを中心に研究を進めました。現場で触発されることが多い私は、議員の方と直接話す中から、多大な示唆を得ました。

現在は、地方自治体に対する経営改革のコンサルティングに携わっており、主に行政評価を担当しております。行政評価とは、これまで計画中心で進められてきた地方行政に、事後的な評価の視点を組み込むことによって、より効果的に施策を展開させるための方法論のことです。私の職場は、VALDESと似ており、多様な専門を持つ人たちがいます。その中で、仕事の幅を広げながら、学ぶべきテーマを自ら見つけて、深めなければなりません。VALDESで培った「広げることと深めることのバランス感覚」を生かすことができると考えています。

自己反省的に言いますと、VALDESという環境を有意義に活用するには、自分の考えや方向性をしっかりと持つことが大切だと思います。「他人との対話」を始めるまえに「自分との対話を十分に行うことが、「視野を広げること」の前提だと思います。あくまでも自分の考えや方向性を持ったうえで、「手段」としてVALDESを利用することが重要なのではないでしょうか。

聞き手 佐藤祐賢(VALDES M1)

神取直貴さん

コミュニケーション上手のT字型人間へ

神取 直貴 さん
(NTTデータ)

現在、ビジネスの世界ではT字型人間が求められていると思います。T字型人間とは、一つ長けている専門分野があり、それを軸に様々な分野に知識の広がりを持っている人のことをいいます。VALDESではT字型人間になる基礎を築くことができます。VALDESは「文理融合」を理念に掲げています。文理融合は学問分野に留まらず、人と人との交流でも可能です。例えば、科学的な問題に対し、社会学という切り口の新しい意見を聞き吸収することはまさに知識の幅を広げる第一歩でしょう。

私は現在、SEとして金融機関営業店システムの新規の企画から、開発までを行っています。この仕事では、ITスキルもさることながら、顧客の要望を短時間で正確に捉え形にしてゆく能力が求められます。さらに、その中から独自の付加価値を見つけ出し提案してゆくことこそが本当のサービスとなります。ここで重要なのがコミュニケーション能力です。このコミュニケーション能力を培う場としてもVALDESは良い場でした。

VALDESには知的好奇心の旺盛な刺激的な仲間や先生方が大勢います。自分の分野では絶対に負けないという気持ちで臨んだ議論では、相手を説得するための能力をおおいに養えました。また、ディスカッションプログラムでは、分野の違う仲間の発表でもしっかり論点の本質を見抜こうと必死に相手の話に聞き入りました。この「説得する」、「論点を把握する」という点はコミュニケーション能力を培うのに非常に役立ちました。

専門分野を追求しながら、さまざまな価値観に触れることのできるVALDESは、「コミュニケーシヨン上手のT字型人間」になりたい人には最高の場だと思います。

聞き手 佐藤祐賢(VALDES M1)

早川明宏さん

人を説得するスキルを身に付ける

早川 明宏 さん
(野村総研)

1996年4月、東工大の大学院に、社会理工学研究科・価値システム専攻(VALDES)が新設されました。私たちは、この時VALDESに入学したので、一期生になります。

VALDESに入学する前は、東工大の理学部情報科学科に在籍していました。卒業論文では、オペレーションズ・リサーチに関する研究を行いました。東工大の学部生の多くは、エスカレーター式に進学します。つまり、大学院に進学した後も、学部の時と同じ研究室で研究を続けるのです。

しかし、自分が社会に出て働くことを考えた時に、ここで少し違った環境に身を置いてみるのもいい経験だと思いました。また、大学入学当初から、現在携わっているような仕事に就くことを考えており、そのまま同じ研究を続けることに若干迷いがありました。その時目にとまったのが、「いかにも魅力的なこと」が書いてあるVALDES の案内パンフレットでした。それに惹かれて、VALDESを受験することにしたのです。

幸いにも、難関(?)を突破してVALDESに入学できました。入学後は、渡辺研究室に所属し、開発経済学の研究を行いました。修士論文で取り組んだテーマは、アジアにおける電気通信産業の発展についての研究です。VALDESのいいところは、さまざまな種類のバックグラウンドを持った人たちがたくさんいるところです。そのような人たちと、ディスカッションするという経験は、学部時代には全くなかったことでした。

VALDESを卒業し、野村総研に入社してから4年近くが経過しました。現在の所属は、情報・通信コンサルティング一部という部署です。学生時代は、アジアの通信産業の研究を行いましたが、現在は国内の通信会社のマーケティング戦略や事業戦略に関するコンサルティングを行っております。その他にも、携帯電話やインターネットなどの利用に関するアンケートをもとにした「情報通信利用動向の調査」や「IT市場ナビゲータ」 などにも携わっています。

社会に出た後で実感したことは、「人を説得するスキルが大事」ということです。社会に出ると、本当にいろいろな人たちとコミュニケーションをする機会がありますが、学生時代に異なるバックグラウンドを持った人たちとディスカッションできたのは、非常にいい経験であったと思います。

現在、VALDESの同窓会長をさせていただいております。せっかく、VALDESのようなところに来たので、つながりは大切にしたいと考えております。

聞き手・服部牧夫(VALDES M1)

一針源一郎さん

現代のダビンチは、ひとつのチームである

一針 源一郎 さん
(日立製作所)

私は、VALDES博士課程の第一期生です。日立製作所企画室に勤務しながら、 研究活動に取り組みました。学位論文の題目は「統合ポートフォリオ理論による経営資源配分の検討-総合電機を例として-」です。今田高俊教授に指導を受け、企業での問題意識を研究につなげることができました。現在、企画室で国内外の調査や、事業ポートフォリオ経営などにあたっています。

始めはコンピュータ開発部門に配属され、シンクタンクへの異動後、フランスにある欧州大学院INSEADで経営学修士を取得しました。その後、実際のビジネス上の課題を解決するために、テクニカルとフィロソフィーの両方が必要というVALDESの理念に共鳴し、進学を決意したのです。2001年にはハーバード大学へ短期留学するなど、現在も実務と学問との連動を続けています。

当時はまだeメールがなかったために随分苦労しましたが、VALDESは社会人が多く、様々な分野で活躍している仲間と研究活動を共にできたことは、非常によかったと思います。それぞれの研究テーマは異なっていても、学び合えることは素晴らしい点でしょう。

これから求められる能力はどのようなものかを考えると、今日のような文明の転換期は、再びレオナルド・ダビンチの時代だと言われていて、総合的な能力が求められています。昔は一人の天才を求めていたけれど、ここまで専門の分野が深くなった現代のダビンチは、ひとつのチームであると私は考えています。文理融合といっても、自分が文理のすべてを知っているというのではなく、誰かに聞くことができるネットワークを持っていることが、大切なのです。自分の中にベーシックなエキスパートの部分が備えられていて、足りない部分を補いあう。そういう意味でコミュニケーション能力が非常に重要になっていると思います。具体的には、語学、コンピュータを使う能力、友達と仲良くする能力です。寛容な感受性が必要になります。

VALDESはいろいろな人が集まっているので、研究室に閉じこもっていてはもったいない。語学については英語だけでなく、もうひとつの言語能力があればそれだけ幅が広がると思います。VALDESは、現代の「チーム・ダビンチ」の可能性を秘めている場なのかもしれないですね。

聞き手 土谷真喜子(VALDES M1)

高橋範光さん

予想外の何かが得られるはず

高橋 範光 さん
(アクセンチュア)

学部時代は大阪府立大学で経営工学科を勉強していたのですが、机上の理論だけにとらわれることなく、より社会との接点を見出すことができるような学問をしたいと思いVALDESの木嶋研究室を受験しました。そこで研究室では、自分自身のバックグラウンドを活かしつつ社会に何らかの結果が出せるような「意思決定」理論について研究しました。

また、VALDESの特徴的なカリキュラムの一つでもあるDP(ディスカッション・プログラム)にも大変興味がありました。実際DPでは、VALDES内にある哲学、法学、社会学などの様々な分野における発表を聞き、議論を交わす機会がありました。こういった様々な交流を通して自分自身の研究テーマである「意思決定」についてもより広く、より多方面から捉えることができ、新たな視点や考え方を持つことができました。

VALDESには、自分の専門分野の発表を通してVALDES内メンバーでディスカッションを行うオープンセッションがあります。様々な分野の人間が集まっているわけですから、メンバー間での議論の俎上にあげるためには異分野メンバーに対する意図伝達の工夫が必要となってきます。きちんと自分の意図を相手に伝えることで、様々な観点からのフィードバックをメンバーからもらうことができるので、この経験は非常に有意義なものになりました。

現在はIT系コンサルティングファームに勤めています。Webなどの情報技術を利用して、クライアント企業のマーケティングやプランニングなどのお手伝いをしていると言ったらいいでしょうか。コンサルティングの仕事をしていく上で、企業の経営層の方々とお話をする機会もあるのですが、いかに分かりやすくお客さまに伝えるかということが重要になってきます。その際に、オープンセッションで培った「自分の意図を相手に的確に伝える」という訓練が活かされているのではないかと思っています。

VALDESはなんでもできる専攻だからこそ、何かやりたいことや目的を明確にして入って欲しいと思います。そうすれば、自分の目的以外にもきっと予想外の何かが得られます。また、VALDESには本当にいろいろな人間が集まっているので、実際にVALDESに入学して様々な人とのコミュニケーションを肌で感じて欲しいです。

聞き手 松本斉子(VALDES M1)

沓澤弘美さん

「欲張り」な人たちの出会い

沓澤 弘美 さん
(洗足学園中高)

■ VALDESを選んだきっかけ

「あ、そうか。」という突飛な書き出しが気になって何となく手にした短文が、全てのはじまりでした。読み終わった時のぞくぞくした感じはいまだに覚えています。その書き方こそが、また、そこに書かれていた歴史の方法こそが、当時の私が求めていたまさにそのものだったからです。

その著者が山室先生でした。わかる言葉で語られる歴史の必要、従来の「歴史学」の方法だけでは扱いきれない歴史へのもどかしさ......VALDESには、求めているものがあるかもしれない――これが、VALDESとの出会いです。

■ VALDESで得たもの

・共通理解のための表現方法

文理の橋渡しをめざすという欲張りな専攻ゆえか、集まる人びともまた相当の欲張り。とにかく研究や知識の獲得には人一倍貪欲で、また、前提となる各自の基盤もしっかりしている人が多いのです。だからこそ、DP(ディスカッション・プログラム)は試練でした。ただでさえアクの強い人々、加えて専門分野はばらばら。文系的な従来の発表方法では、「結局どういう意義があるのか?」と問われたり、思いもしなかった盲点を指摘されたりと、衆目の前で散々な目にあいます。

また、VALDESは発表時間にもとても厳しい。要領よく報告し、質問に対しても瞬時に相手の意を捉えて要領よく応答していかなければなりません。この試練を乗り越えるため、2年間で特に鍛錬を心がけたのは、

  1. 説得力のある論理構築(データの収集・分析方法の獲得)
  2. 誰にでも要点が通じる表現方法(発表内容の吟味・パワーポイントなどの活用・話し方の訓練)

の2点です。これらは、今の仕事にも最も必要なことだと思います。

・新たな知識と視野と仲間

まるで研究室がわが家のような理系的環境の中での、多様な人々とのつきない会話や議論、これがやはりVALDES一番の醍醐味でしょう。異分野への興味と、自分野に強いポリシーを持つ者同士の飲み会は、少しDPのような緊張があり、けれどそこが心地よく、楽しい時間でした。

■ メッセージ

VALDESのおかげで今の自分がある、と思っています。それ程ここでは多くのものを頂きました。「多様な集まりゆえ不足や不備も多いだろう、でも、山室先生のもとで研究できるだけで十分。」と、実は入学前は VALDES自体にはさほど期待しておりませんでした。しかし、結果的には大学院生としてやりたかったこと、習得したかったことを、VALDESは想像以上に満たしてくれました。本当に、学問研究の場としては最高の環境だと思います。

聞き手 佐藤則子(VALDES M1)

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