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"Consensus Building" Seminar

セミナーの様子COMMEMTS

受講生の感想(2023年度)


【C「対話の場をデザインする」クラス】
セッション1 合意形成のレジティマシー

  • 先生の図書館事例のお話にあったように、合意形成の場の主催者(事例ではA市行政)がプロセスの正当性を考えられていない状況(話し合い直前に先生に相談があったという事象等)を残念に思いました。本日の講義を踏まえ、協議会やワークショップでプロのファシリテーターを置いたとしても、プロセスデザインの正当性を意識しながらどれほどじっくり準備するかの方が重要ではないだろうかと感じました。言い換えると、ファシリテーターの存在や技術よりも、事務局の合意形成プロセスに関する知識や姿勢、準備時間などが、合意形成の正当性に大きく影響すると考えました。そう考えると、事務局(合意形成を取りたい主体)をいかに変えるか/育成するかが非常に重要と思うのですが、そのアプローチ手法やご経験がございましたら、是非ご教示頂ければ幸いに存じます。また、最終的な意思決定を誰がどう行うのか(ケースによるとは思いますが)、その妥当性はどう判断できるのか、考え方や実践例など可能なかぎりお聞かせ願えればと思います。
    (講師より: まさに、話し合い以前の段階が、重要だと思っています。コミュニケーションの場をいかにデザインするかが大切だということ、実践を通してご理解いただくしかないように思います。「話し合い=余計な手間と時間」ではないことを、わたしたちもいろいろな形で伝えていきたいと思います。)
  • ケーススタディでは他の方から自分では思いつかない意見やコメントが出てきて、改めて多様な声の収集の必要性を感じました。
  • 豊田先生の経験談の中で、思ったより若い方が俯瞰的な視点を有していたとありましたが、企業の中でも「俯瞰的な視点(全体最適な視点、と言ってもいいかもしれません)」は同様に必要と感じています。どのようにしたら、俯瞰的な視点を有することができるのか、または引き出せるのか、に興味があります。
    (講師より: 単純ではありますが、「我が家が洪水被害を受けるか」という観点も重要なインタレストですが、「地域にとってよりよい川にするには」という観点からの議論も必要になります。公共的な視点の獲得という点において、子どもの参画が大きな意味をもつことを授業では述べました。他にも方法はあると思います。話し合いのテーマの選定もその一つです。)
  • 実例の紹介、参加者同士のディスカッションを通して理解が深まりました。
  • 多様な意見を収集するうえでデジタル技術を活用することで話し合うよりも優れた点はありますか?またデジタル技術を活用することの限界点はどのようなことですか?
    (講師より: 意見の収集と分析は可能なのですが、人びとのエージェンシーは失われていくのかと思います。)
  • 「公共施設は作って終わりでない。その後の利用も一緒に考えていくことで、自分たちで作る意識をもつ」という話がとても興味深かった。また、「市民主導になることで公共の負担が減る」ということが理想なのかなとも思った。
    (講師より: そうだと思います。ただ、その点をあまり前に押し出すと、公の役割を民に押し付けていると考える市民の方もいらっしゃるので、伝え方は重要かなと思います。)
  • 専門用語のリストがあるとわかりやすいです。今回グループワークの皆さんがすでに現場で活躍されている方々だったため専門用語が多く出てきて理解できなかったです。
  • 合意形成学を学べば学ぶほど「合意とは何か?あり得るのか」とモヤモヤしていました(笑)。先日そのテーマで政治哲学者の方と話す機会があり、そこで出たポイントは「合意というより、意見の差異をより鮮明に浮き彫りにする、そのプロセスと差異を全体でともに共有することが大事なんじゃないか」という話になり妙に腑に落ちていたのですが、だとすると尚更そこからクリエイティブなアイデア出しに転換しつつ、1つの着地を目指すのはとても難しい。。。とまさに冒頭の豊田さんのお話の通り(笑)。ここからは「公平性・公共性・創造性」の3つをアンカーに経験を積むと同時に、様々なプロセス設計・場づくりのケーススタディを知ることが大切なのでしょうか。。。とするとたくさんの事例(成功も失敗も)が知りたいです。
  • 合意形成の基本プロセスでのそれぞれの進め方(例えば、事前準備のアセスメントなどどのような手法で行うのか)を知りたいです。桑子先生の本に記載があるでしょうか?
  • 合意形成のプロセスで随所に発生するリスクに対しての回避策、手法があれば知りたいです。
    (講師より: 桑子先生の著書、役立つと思います。)
  • 時間がなくそもそも安心安全な関係性が成立していない現場で、合意形成を進める必要があった場合の最善策は?
  • 「農村においては未来を描くことが難しい」という説明がございましたが、農村のように人口が減少するような地域においては、都市部などと比べて、発展的な意見や斬新な意見が出に難いという状況は見られるのでしょうか?
  • 可能でありましたら、講義前に使用する資料を配布して頂ければ幸いです。頂戴した資料に直接メモをしたいと思い、お願いさせて頂いた次第です。
  • 子供を入れる、個別訪問時に意見を言ってきた人には話し合いの場で主張することをお願いするなど、実践的なアイデアをうかがえて非常にためになりました。「反対意見があるほど思いがあり、クリエイティブな方向に行くとパワーが大きい」というのが印象的です。公平・公正でありながらかたくなにならずに参加者全員で創造ができるような場を作るために、どのような意識をもち、どのように場をデザインしていくべきか、次回の講義でも吸収していきたいと思います。
    (講師より: 子どもの参画はそれ自体に意味があり、それによって大人が変わっていくというのは、あくまでも副次的な影響と捉えてください。
  • 豊田先生と高田先生の対談でお聞きしてみたいテーマは次の通りです。話し合いの場で少数派の意見を持つ人・少数派の属性を持つ人に意見を自由に発言してもらうために、また他の参加者にそのような意見に対して耳を傾けてもらうために、どのような工夫ができるのか。例えば、再エネ施設の建設において、高齢者は景観を損なうことを理由に反対意見が多く、若者は温室効果ガス削減に貢献できるという点で賛成意見が多いというような場合、当該地域住民のうち高齢者の割合が多い場合は、多数派の意見に押されて少数派の若者が賛成を続けることが難しくなり、建設が実現できなくなるというようなこともありうると思っています。同様に、雇用が生まれるというのは若者にとってはメリットですが、引退した高齢者にとってはメリットにならない場合もあると考えています。若年層は影響を受ける期間が長いので、少数であるということで意見が通りにくくなってしまうと公正ではないと感じます。数としては少数だが影響を受ける期間が長い/受ける影響が大きいステークホルダーがいる場合、彼らの意見をどう取り扱うかという点について、実践していることなどあればお聞きしたいです。
  • 第2回のセミナー「討議民主主義と合意形成」の時に聞くべきだったかもしれませんが、坂野先生が原発廃棄物の話をされましたが、専門家による科学的な話が住民にも提供されましたが、科学的な話に住民はどの程度理解し、考えをまとめる場面でどのように役に立ったのか。科学的な説明で、人は考えを変えていくことができるのか、セミナーのディスカッションで、試してみたいと考えます。
  • 子供が対話の場にいることで年配の方の発言が変わるという話をきいて、自分も小学生の時に近所の年配の人に地域の昔の話を聞きに行ったことがあり、その際、年配の方も喜んで話してくれたことを思い出しました。対話の場で豊田先生が地域の方々とコミュニケーションをとるときに何か意識していること、注意することなどあれば教えていただきたいです。信頼関係の構築することは簡単ではないですが、ワークショップを重ねて佐渡島の地域の方との信頼関係を構築されてきたと思いましたので気になりました。
  • 豊田先生の解り易い解説に加え、何度もルームに移って意見交換できたことはとても理解促進、頭の整理に役立ちました。何度も回を重ねるにつれ、メンバーの方と顔見知りになったので、問題意識の共有や新しい気づきに触発されてきています。
  • 合意形成は、意見の調整や妥協点を見つけることかと考えていましたが、創造的なプロセスであるという新しい考え方を得られました。合意形成に対する様々な考え方に触れられて、成長に繋がったと感じています。
    (講師より: 合意形成をどのようなイメージで捉えるかということが、話し合いの設計に大きく作用しますので、ぜひクリエイティブなプロセスであることをイメージしてみてください。)
  • 「地域」における合意形成について、最近、関心を持つようになりました。町内会等の(直接的には自治体が関与しない)組織において、友好的に運営されるためには(町内会の内部はもとより)「地域」住民の方々と友好的な関係を築いておくこと。そして、、協議すべき案件が生じたときの合意形成のあり方を考えておきたいと思っています。このため、今回の講義は大変参考になりました。


    (2023年度C「対話の場をデザインする」クラス、セッション1 にて)
セッション2 人びとが語り始める場をひらく
  • すぐにでも活用可能な話し合いの工夫の仕方をお教え頂き、とても参考になりました。テーマ・メンバー・場の様子によって使い分けが必要と思いますので、話し合いの場のデザイン・ファシリテーションの実践を通して、身につけていく必要があるように思いました。そのような機会がありましたら、今回学んだことを積極的に試し、状況を見てアレンジもしていきたいと思います。
  • (高田さんとの対話)の中で、「小さく少ない意見」の話になっていましたが、自分がファシリテーターではなく、会議の参加者の場合は新たな視点を提示することを意識しています。ただ、「新たな視点」になるのか「議論を混乱/発散させるきっかけ」になってしまうのか、むずかしいと感じる時もあります。
    (講師より: カオスは物事を生み出す根源ですから。)
  • 先生方も試行錯誤しながらも前を向いて実践されているうえでのお話しだったので興味深く拝聴しました。対談形式はシンポジウムとも少し違って(むしろ2人で進行されるラジオのようで)面白かったです。
  • 成田祐輔氏著の『22世紀の民主主義』では、選挙制度や議会に明るい未来を見ておらず、センシングやアルゴリズムの技術を高度化させることによって、より民意を自動的に収集し国民の意思決定に活かす方がより望ましい結果を生むのではないかと主張していると解釈しています。また、これはサイレントマジョリティーが相当数存在する程度の大規模な集団でかつ互いに知らない者同士の方が圧倒的に多い規模での「意思決定」時の話だと思われます。一方で、あるコンフリクトの事象が発生している場合に、影響のある地域の範囲が限られ、ある程度顔の見える範囲の人数の場面では、極めて感覚的ですが、面倒なところはありながらも対話を通じた「合意形成」が望ましいように思われます。そもそも「意思決定」と「合意形成」とで意味が異なるとは思いますが、合意形成過程において対話が重要な役割を担う理由は何だと思われますか。
    (講師より: 多角的に掘り下げるということのほか、主体形成に繋がるような対話が重要なのではないかと思います。自分達で導き出した解だから、それを最大限に活かしていこう…そういう意識の芽生えが大切だと感じています。)
  • 実際に合意形成の現場にいる先生方の対談は興味深かった。先を見通したプロセスの設計は、「良い話し合い」のためはもちろん、様々なイレギュラーやリスクの回避、ダメージ軽減のために重要であることが再認識できた。
  • コロナ禍を経て、学校教育などでもオンライン授業と対面授業における浸透度の違いなどの調査や研究が活発化している印象ですが、合意形成のための対話におけるオンライン参加とリアル参加の違いに言及した文献がもしあれば知りたいです。オンラインであれば当日その場所にいられない人も対話に参加しやすくなる一方で、発言内容そのものだけではなく参加者の身体的な存在感が対話に与える影響もあることを考えると、例えば画面越しに発言された意見が対面での参加者から発言された意見よりも力の小さいものになってしまう可能性もあるのかと思っております。
    (講師より: 特に文献は存じ上げないのですが、子どもの哲学という対話を、コロナ禍においてオンラインで実施した時に、はじめは「対話はやはりリアルだよね」と思いながらやっていたのですが、想定外の効果がありました。それは、参加者の対等性が強調され、さらに他の人からの圧を受けたり、つるんだりすることがなくなったことです。対話の中で生じる「つるむ」という現象は、日本ではよく見られます。隣の人の顔を伺いながら同じように振る舞おうとすることは、対話の場のセーフティを低下させることがあります。オンランでは、各人が同じウエイトをもつ個のパネルとして並ぶので、特に集団の中のパワーバランスが負の影響を及ぼしている場合、オンラインの方が対話しやすいという状況が生まれました。)
  • 自分自身が会議等で発言できない人間なので、「わからないということをいえる場づくり」というお話が身に沁みました。意見や疑問を引き出すこと、そしてその人がそう思った背景や理由を無理なく聞きだし掘り下げていくことが、本質的な合意形成とそのプロセスの共有につながっていくと感じました。資料は授業の前半にいただければ嬉しかったです。講義を聞いている中で前のページをみたいことがあったり、1回目の講義のことになりますが、グループワークの時に手元にないのは心元なかったです。また、皆様のセッションサマリーのまとめも、講義前に見せていただければ助かります。前の講義の時に抱いた疑問を解消したり、皆様の質問を見て何か気づきがあったりしてから次の授業を受けたほうが実があるかな、と思いました。
  • 今回の講義の中で、「10年先の未来を考えて、合意を形成していく」との話がありましたが、本当に可能でしょうか?(前回も聞いているのにしつこいようですが) 地球の温暖化対策は本当に切迫した問題であり、そのためにはカーボンニュートラルなエネルギーや脱炭素社会を目指していくことが必要です。そこには自分の個人的な目に見える負担がない場合であって、そこに年間一人当たり幾らかの出費が新たに生ずるような意見に、緊急であっても、そこまでして合意に達することが可能でしょうか?音や、風車の日陰が気になって候補地が変わったりする中で、協力金は受け取っても自分の財布からお金を出すことについては、ほぼ合意が得られないと考えています。実際は税金が使われているのですが、そこに対してはどのように使われていても、あまり関心がないので、どこか違う話のなかでの増税が国会で審議され可決されるのを、ただ黙ってみているだけでしょうか?
    (講師より: ご指摘の点について十分理解できていないのですが、全てのコンテクストにおける意思決定が、多様な人びとが参加しての合意形成である必要はないと思っています。第1回目の講義では、農村地域において未来を想定した計画作りが求められているものの、バックキャスティング的アプローチは極めて難しいという話をさせていただきました。中長期的な視座が必要になっていても、なかなか難しい。まずは、とにかく思い浮かんだことを共有できる場が必要だと思っています。)
  • ある程度話し合ってすべての案が没になってしまった、話し合いが行き詰ってしまった時に、どのように対処、もしくは自然な会話に持って行くのか知りたいです。ボールを渡して話してもらう?等のゲーム感覚に持ち込むことで、自然に会話を誘発し、現場の空気感が変わることによって新たなクリエイティブな意見を引き出せるようになるのですかね。
    (講師より: あまりそういう経験がないので、コメントは難しいです。セーフティの高い対話の場ができていて、多くの人が声を共有できている状態なのに行き詰まってしまうのだとしたら、外から新たな情報やナレッジのインプットが必要ではないでしょうか?)
  • 虹色のダムの話はプロダクトに関する市民からの意見出しの時によく起こっていることに感じます。何を市民から出してもらうかですが、「具体的なものを発想してもらうのではなく、そこで何を実現したいか、どんなことが起こって欲しいかを出してもらうべき」というのはその通り。浪江町での絆再生IT事業の際には、そこにデザイナーやエンジニアなど専門家、開発側も参加してもらってともにアイデアソン、ハッカソンを行い、それを元にプロトタイプを作り市民の反応をプロが見て落とし所をプロ側で判断しました。市民側は困り事を出すプロとして参加して頂く方が広く多様な層の意見を拾うことができますが、どう解決するかは発想できない。どの部分で市民に関わり代を持ってもらい、まちを作る側の人間として関わってもらうかの設計が肝になると思います。
  • 「少数派の意見の取り扱い方」での対話が一番印象に残りました。「小さな声を意図的に拾い上げて、視点を変えることで発想を広げる。 はっとさせられる意見、多様な意見の大切さを話す。他の人たちの気づきに繋がる。発達障害や障害者など人と見方が違う人の意見を紹介したり、取り上げたり、体験したりもする。配慮して呼ぶというよりも、そうすることにより場が活性化され、撹乱が起こり、大きい多数な意見や対立が激しい現場では、活路が見出されることがある。クリエイティブになるためには、少数の視点を引き上げていくことを意識的に持っていく」。「多数決で済むなら、そもそも合意形成しなくてよい。声が大きな人、多数決な意見に時間を取られないようにマネジメントすることを心がけている」。「少数派の声ではなく、どんな価値基準があるのか、という軸で扱うようにする。そうするとクリエイティブに発想する評価軸になる。対立という二項対立から、点を増やしていくような問いを用意する。十分に広い空間を作ってから議論するようにすると、包括的な俯瞰しての対話になる」。いずれもこれからの現場で大切にしたい視点です。哲学対話でも議論の場でもこの流れに持っていくためのファシリテーションや場づくりにチャレンジしたいと思います。
  • 豊田先生と高田先生のオンライン上での対談は面白い進め方だったと思います。様々 論点に関して自由な議論を展開されていたので、新鮮で参考になりました。
  • 住民との対話にコーディネーターとして臨む場合の工夫に驚かされました。これもプロセスデザインの一つと考えられるのでしょうか(「質問表」や「共有ボール」など)。講義の前日のこととして話された「ChatGPT」のことが強く印象に残っています。利用価値がありそうですが、例えば合意形成に取り組む場合、どのように使っていいのか、皆目分かりません。
    (講師より: ChatGPTの適切な使い方はわたしもまだわかりませんが、新たな視点を獲得する機会になることがあると思います。もちろんそうじゃない場合(あまり参考にならない情報が出てくる場合)もありますが。上段に、行き詰まった時にどうするか?という質問がありましたが、デジタルツールがインスピレーション獲得に活用されるようになることも、将来的にはあるでしょうか?ロボットが参加する哲学対話について、研究されている方もいらっしゃいました。)
  • 合意形成を専門とされる先生方による対談が面白かったです。今回触れることができなかったトピックもどれも興味深く、もう少し聞いてみたかったです。豊田先生のクラスでは実際の取組内容を多数紹介してくださったので、理論的な部分に加え、実際の現場が結びついて面白かったです。始めのころに、地域ではどのような合意形成の現場があるのかと思っていたので、イメージができることで理解が深まりました。


    (2023年度C「対話の場をデザインする」クラス、セッション2 にて)


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