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"Consensus Building" Seminar

セミナーの様子COMMEMTS

受講生の感想(2023年度)


【B「環境政策における合意形成」クラス】
セッション1 市民参加と合意形成

  • 具体例も紹介していただきながらだったため、すごくイメージしやすかった。自分自身の思い当たる失敗に「ここの考慮が不足してのか」という気づきが多かった。ひとつの合意形成、協議の場を設けるために、理論的に考え準備をする必要性が実感できた。一番印象的だった言葉は「参加者は地域の専門家」というものである。市民の持つその地域の素材や環境、人材などの情報は、どんな合意形成の場でも一番大切に扱うべきなのだろう。
  • 多様なバックグラウンドを持つ受講生同士によるグループ討議は関心事も多様なので面白いです。
  • ・若者の方がSDGsへの意識が高いと思っていましたが、屋久島の事例では、中高生の方が開発行為に寛容(賛成)であったというところに興味を持ちました。
    (講師より:若者がSDGsや脱炭素にどのような意識を持っているかは、地域や世代によって異なることが考えられ、私自身もよくわかりません。屋久島の若者は日本全体からみるとやや特殊なケースだったかもしれません。現在、再エネや脱炭素に対する若者(高校生)の意識に着目した研究に取り組んでいますので、別の機会がありましたらご紹介したいと思います。)
  • 最適な合意形成の場をデザインするのは簡単ではないと感じました。誰を対象とするのか、どのような場(フォーラム、アリーナ等)とするのか、時系列でどのように進めるのか(段階的な合意、協議の頻度・回数)など。ケースバイケースになるとは思いますが、「合意形成の場をデザインしてみましょう」というケーススタディのグループワークを実施するとイメージがよりつかめるのかもしれないと思いました。
  • 「環境政策は、必ずしも市民参加型の合意形成に縛られなくてもいいのではないか?(ポリシーミックスで良いのでは?)」という先生の発言が印象的でした。環境政策は目指すゴールが明確ですし、クリティカル(待った無し)であるという点から私も腹落ちしました。経済的なペナルティは最後の手段にしたいところ(シチズンシップ醸造という観点でも)ではありますが、仕組みとして自ずと関心度が上がる工夫をすることがとても大切で、そのためのアイデア募集という形で市民参加を活用する(意識高い層の活用)なども良いかと思いました。合意形成を行う内容に応じて、プロセスの設計を柔軟に考えていきたいと思いました。
  • 私自身は環境政策での合意形成に関わる機会はないのですが、環境アセスメントの現場にいる方が多く参加されているようですので、そのみなさんから合意形成にあたり、具体的にどのような課題が発生しているのか、それに対してどのような進め方の改善ができうるか、先生の観点をお伺いしたいと感じました。いつも質疑応答タイムがかなり実り多き内容になっているという印象を受けますので、そのような進め方だととても実践的で学びが多くなると思います。
  • 屋久島の事例が環境政策についての合意形成の事例というよりは、環境政策における合意形成のプロセスに則り、フォーラムとアリーナという会議体を活用して市民参加の場を作り、市民の環境への課題意識を行政側が把握するとともに、環境への意識向上を図ると、というまちづくり寄りの事例だったように感じました(どちらかというとヒアリングと場づくりと意識向上メイン)。合意形成に至るまでの具体的な事例と、それに基づいた効果的な合意形成のプロセスとは何か、が知りたいなというモヤモヤが残りました。次回の紛争・対立的なケースでは合意形成に至る具体的な事例とともに合意形成に向けてのプロセスを学びたいです。
    (講師より:前回の話では合意形成の場やプロセスについて平和的状況を中心に話をしましたが、今回は紛争や対立的な状況が生じることを想定した合意形成について取り上げます。その際、手続き面だけでなく、分配的公正の観点を考慮することが重要になります。)
  • 屋久島の事例をもう少し詳しく伺ってみたいという思いがありました。
  • 聴講者の皆さんだけではなく、もう少し先生との双方向での対話がオンライン上で出来るとより面白くなると思いました。例えば分けられたルームの中に先生も入ってコメント、議論頂くとかは如何でしょうか。
    (講師より:ご提案ありがとうございます。(お邪魔にならない程度に)グループディスカッションに参加させて頂きます。)
  • 当事者・地域外からくる反対する人の対処法が気になり、次回のセッションで触れていただけるということなので、非常に楽しみにしております。
    (講師より:頑なな反対意見を持つ人がいた場合の合意形成問題について、特効薬のようなものがある訳ではないですが、事業開始に至った事例をご紹介します。)
  • 合意形成のプロセスなど、漠然としていた点がだいぶ理解ができてきたと思います。屋久島の事例紹介に関して、数回のフォーラム開催後、最終年度にステークホルダー会議が実施されたということでしたが、フォーラムで得た市民や住民からの考えや意識調査の結果などの情報はステークホルダー会議でどのように共有、活用されるのでしょうか?また、参加者分析について、参考になる文献があれば教えていただきたいです。
    (講師より:
    1.大きな点としてはステークホルダー会議のテーマ決め(観光)に反映したという点があります。観光について具体的な意見も多数出ていましたので、ステークホルダー分析のインタビューでも活用しました。
    2.(財)国際開発高等教育機構(FASID)の「開発援助のためのプロジェクト・サイクル・マネージメント」2001年→PCM手法の関係者分析が参考になります。PCMの概要は「参加型社会の決め方 ―公共事業における集団意思決定―」木下栄蔵・高野伸栄編、近代科学社、2004年、などでも紹介されています。
    3.サスカインド他のTHE CONSENSUS BUILDING HANDBOOK, SAGE PUBLICATIONS, 1999の第2章にあるコンフリクト・アセスメントも参考になります。)
  • 参加者がどのような層かは分からないが、業界内の知り合い同士が多いのでしょうか。今回に限らず、学会の施設見学会等でも、参加者の蓋を開けてみると知り合いが多いということはあると思う。私は20代後半であるが、年上の方が多く、意見交換は緊張した。また、経験が少ない人が入ることにより、議論が盛り上がらないということもあると思うので、その点については申し訳なく思う。ただ、できる範囲で発言は試みた。なかなか他の会社の方と自由に話す機会はないので、良い経験になった。
  • 博士論文の研究のフィールドワークの中に(日本橋の老舗コミュニティの研究がテーマです)首都高速道路日本橋地区事業化計画に関するものを対象としており、首都高速を橋の上に建設する際の資料を読んでいると、老舗の旦那が、公の場では賛成をしていても、私的な飲み会の場では、でも、本当は反対であったと話していたなどがあり、意思決定において、公での意見と私的な場面でのものを揺れながら人は決定をしていくのだなと思っていました。その揺れがあることを前提に、何度もフォーラム、アリーナ、コートといった繰り返しをしていくのだなと思いました。日本橋に関しては、結局、計画は実施されたけれども、それに対して正しい決定ではなかったのではないかと、長年自問自答してきたこというプロセスをへて、もう一度意思決定をしなおした例なのではないかと思いました。意思決定は終わりではなく、一つのプロセスなのではないかと考えました。
    (講師より:韓国・清渓川の高架道路が撤去されて川が復元されましたが、人々や社会の価値意識が時代により変化してきたことを象徴する出来事と思います。合意形成では同調圧力が働くことはよくあるので注意が必要ですが、声が大きい人の意向(これが少数派であるケースもあり)に引っ張られることもしばしばあるように思います。少数派や声が大きくない人々の意見を見える化することも重要なプロセスになると思います。)
  • 毎回毎回、新しいテーマの内容の奥深さに感心しています。これからの、講義も楽しみにしています。このような学問を、大学などで、必須の科目として、全員が受けると、もう少しまともな日本になっていくのでしょうか?
  • 講義の中で、屋久島モデルでは当初の計画とは方法を変更して実施された、というご説明があったと思う。計画はとは実際の状況に応じて適宜変更されたほうが、現実に即しており有効であろうことは想像するが、国の事業においてもそのような臨機応変な変更が許されるのか、またそれを通すうえでどのような議論がなされたのかお聞きしたい。
    (講師より:屋久島プロジェクトは公的な意思決定を伴うものではないので柔軟に変更できたというのはご理解の通りです。環境政策における合意形成は公的な意思決定を行う前に実施することで、より賢明な意思決定ができること、決定の実行性が上がるといったことが期待できます。臨機応変な計画変更ができるかどうかが重要で、これは公共的な意思決定かどうかに関らずポイントになると考えます。)
  • 講義の中で錦澤先生が「ステークホルダー会議は不透明にやろうとすればいくらでも不透明に実施できる」ということをおっしゃっていたのがとても印象的でした。私は企業のサステナビリティ部門で働いているのですが、企業がステークホルダーエンゲージメントの重要性を認識し始めている理由は、消費者に対するレピュテーションリスクやブランドイメージの向上以上に、投資家の目線を気にしているからではないかと思っています。業種等によってはターゲットとする顧客がサステナビリティに関する意識が高い層とあまり重ならない場合もありますが、投資を得られなくなることは企業としての存続に直結するためです。対して、地方自治体が主体となって環境政策を決定するような場合には、投資家のような存在がおらず、地域外のステークホルダーと対話をする必要に迫られてこなかったため、そのような対話に基づいた合意形成が得意ではないのではないかと思いました。
    (講師より:「参加者分析は不透明にやろうとすればいくらでもできる」の間違いでした。最近の民間企業の脱炭素や環境配慮の取り組みをみると、単なるCSR活動の一環として捉える域を超えており、その背景にはご指摘のような投資家の動向が関係していることは同感です。TCFDなどによりその動きが今後さらに進展していくことが期待されます。ただ、脱炭素などの取り組みは進展していると理解しますが、ステークホルダーとの合意形成の取り組みなどがどこまでやられているのか、あるいは投資家がそこまで気にしているのか、といった点ははっきりせず、今後の動向を見て行く必要がありそうです。)


    (2023年度B「環境政策における合意形成」クラス、セッション1 にて)
セッション2 環境紛争と合意形成
  • 具体例も紹介していただきながらだったため、すごくイメージしやすかった。自分自身の思い当たる失敗に「ここの考慮が不足してのか」という気づきが多かった。ひとつの合意形成、協議の場を設けるために、理論的に考え準備をす事前協議・紛争発生後フォローにおける合意形成の重要性を学びました。これらのほか、事業が開始され、問題・紛争発生前のタイミングにおける合意形成や事業の点検、言い換えれば事業実施中における合意形成という場面の事例・議論というのはございませんでしょうか。
    また、講義前半に紛争発生要因の解説がございましたが、合意形成のプロセス・場と紛争発生率の関係について、さらに詳しくうかがえれば幸いです。具体的には、合意形成プロセスにおける「周知」の重要性について言及されていましたが、その他のプロセスである「意見聴取」「意向集約」、場におけるフォーラム・アリーナ、それらの実施回数と紛争発生に関係はございませんでしょうか。実証研究等のご紹介や、先生が関わられた事例について、できればお教え頂ければと存じます。
    (講師より: 事業実施段階での合意形成の事例としては、前回の講義で紹介しました風力発電施設の影のちらつきで苦情が出たケースがあります。運転調整(影響を低減するために一定時間風車の稼働を停止する措置)することで地域住民の苦情が収まったケースですが、合意形成というよりも苦情対応に近いように思います。
    検証できている訳ではないですが、紛争発生確率を下げるという意味では、ゾーニングでの協議の場(アリーナ)を設けて、その過程で抽出された立地可能性のあるエリアの住民説明や議論の場(フォーラム)を設けることだと考えます。その中で出てきた意見を事業計画に反映することがトラブルや紛争の回避に役立つはずです。)る必要性が実感できた。一番印象的だった言葉は「参加者は地域の専門家」というものである。市民の持つその地域の素材や環境、人材などの情報は、どんな合意形成の場でも一番大切に扱うべきなのだろう。
  • 再エネ開発はカーボンニュートラルの実現には不可欠であるが、現実的には全国的に人口減少している山間部や海岸部に設置されるケースが多く、森林伐採することで自然環境の破壊、防災上の問題を引き起こしていたり、土地所有者に土地の売却代や賃借料の収入が入り、それ以外の住民には恩恵がないことから地域内の住民間での分断を招いたり、開発が合意に至らないケースが散見される。そのようなケースにはもともと事業内容に無理があるものも多いと思われる。地域内紛争を避け合意に至る、周辺地域にとっても便益が還元される開発を誘導する仕組みが必要だが、一筋縄では解はないことを再認識しました。
    (講師より: 豊田先生のコメントを受けて授業の最後でも少しふれましたが、林地開発を伴う再エネ事業は年々、開発が厳しい状況になっています。個々の事業で理解を得ることだけでは難しい面があり、再エネビジョンを策定して上限を設けるなどすることで一定の理解が得られるかもしれません。この点については、今後、もう少し可能性を探ることが必要と考えます。)
  • ・昨今、化石燃料から再生エネルギーへの移行において、「公正な移行」というのがキーワードになっていると感じます。再エネ施設を建設するのであれば影響を受ける近隣住民にメリットがあるようにするというのは公正さの観点で必要だと感じますが、近隣住民の間でもメリットと考える点が異なる場合に、どう公正さを目指すのかは非常に難しい点だと感じました。
    (講師より: 来年度の国際影響評価学会大会(IAIA大会、アイルランドで開催予定)のテーマがまさに“Just Transition”で世界的にも関心の高いトピックスの一つといえます。受益圏と受苦圏の設定をどう考えるかは難しい問題ですが、多くの再エネ事業に関する議論の場では受苦(ネガティブな側面)の話だけに偏る傾向があるので、両者をバランスよく扱うという観点が重要です。受益と受苦の話は地域社会学等の分野で蓄積があったと思いますが、私自身もう少し勉強したいと思います。)
  • 今回も具体例が多く、すごくイメージしやすかったです。環境アセスメントのパートをもう少し詳しく聞きたかったです。
    (講師より: アセスメントの話はやや専門的になりますので、再エネ関連の事業者さんやコンサルタントの方々には参考になるかもしれませんが、今回は省略させて頂きました。環境アセスメント学会の関係で議論する機会があるかと思いますので、非会員向けのシンポジウムなどご活用ください(ホームページ等で情報が周知されます)。)
  • 先生との双方向での対話がオンライン上で出来るとより面白くなると思い、前回提案させて頂きましたが早速取り上げて実践頂き、個別に質問議論できたのはとても良かったです。また行って頂ければと思います。
    ・意見交換をする場面で、自分にはなかった質問や観点を得られて、すごくためになりました。
    (講師より: ありがとうございます。私もとても勉強になりますので、次の機会でも参加させて頂こうと思います。)
  • 毎回のセッションありがとうございます。毎週水曜日の夕方が待ち遠しくなっています。
    多少、時間を延長しても構いませんので(参加したい人だけでも良い)、ある課題(実際にあるものもしくは想定したもの)に対し、参加者が合意を形成できるのかを行ってみたいと思います。
    時間的余裕があるわけではないので、例えば行政側、住民側、ほかのステークホルダーなどのグループに固定して分け、メール等で事前に意見交換をし、毎週、それぞれの立場での説明・解説などを行ってみたいと思っています。少し、実施するには、時間がかかりすぎますね、
    (講師より: ご提案ありがとうございます。参加者の皆さんの演習の機会を実験的に設けてもよいかもしれません。猪原先生や他の先生と相談した上で検討したいと思います。)
  • 福岡県糸島市での事例で、関係者同士の対話と、現地実測調査(共同事実確認)により、ベースライン基準以下であることの確認などの手続きを実施し、対話を重ねたことで住民が受入れ、最終的には反対意見をもつ住民に対して事業を受け入れた他住民から説得をうけた、という話がありました。この事例について、反対意見を持つ住民は反対という考えを持ちつつも、他の地域住民からの説得を「受け入れた」という状態なのかなと思いました。全員完全に心から賛成するという状態は難しいとは思いますが、「合意形成」の状態はどのような状態なのか、なにか定義などあればお聞きしたいです。
    (講師より: 合意形成の定義はさまざまあり、猪原先生の編著「合意形成学」が参考になります。何をもって合意が形成されたとするかはケースバイケースなので正解がある訳ではないですが、桑子先生の「多様な価値観の存在を認めながら、人々の立場の根底に潜む価値を掘り起こして、その情報を共有し、お互いに納得のできる解決策を見いだしてゆくプロセス」との説明が糸島市の事例にも当てはまるように思います。(p3))
  • 環境影響の低減について環境アセスの調査結果の説明などと、地域便益創出の話し合いは同時に進めていくのでしょうか?地域便益の創出、「地域にこんなメリットがある」という情報共有はいつどのように地域住民に伝えるのでしょうか。
    (講師より: 環境影響の低減と地域便益の創出について、どのようなタイミングで議論するかは重要な点と思います。関係者間で対話する素地があることが前提となりますが、一つの考え方としては、まず、@再エネの導入の必要性や導入目標を検討し(目指すべきゴールの共有)、次に、A懸念される環境影響についての確認、それへの環境保全策や対策の検討(ネガティブな要素の確認と対策の検討)、その上で、B地域にどのようなメリットがあるか(ポジティブな要素)の検討や便益の対象範囲の検討、といった手順があると思います。岩手県の軽米町の事例がありますので、以下を参考にして下さい。

    長澤康弘,錦澤滋雄,村山武彦,長岡篤(2020)「農山漁村再生可能エネルギー法に基づく基本計画策定時の協議会における合意形成プロセス」環境情報科学論文集34, 25-30)
  • ゾーニング、環境アセスメント手続きを適切に行うこと、地域便益創出はもちろん、稼働後も順応的管理を行っていくという協定や約束をすること、そしてそれを実際実施することは、日本の再生いエネルギー導入のために今後キーになると思います。現状の環境アセスメントではモニタリングや順応的管理はあまり重視されていないと感じます。そこは、環境アセスメント手続きはあくまで事業者主導で行われており、工事してしまえばひとまず荷が降りてしまうという点にあるのではないでしょうか。環境アセスメントの手続きについて、事後モニタリングを含め国がもっと主導権を持ち、海外のように差し戻しや中止命令を法的に課すことができるようにし、事業者の環境影響低減への意識を上げること、同時に、住民の当事者意識や地域環境への効力感を上げることも必要と考えています。ヨーロッパではその点が進んでいると思いますが、先生はどこの国のアセスメント制度が一番合理的だとお考えでしょうか。また、野鳥の会などの民間調査機関は長期間のデータを持っているので、調査や分析で協力しあえれば三者協議や共同事実確認などにもつながるかと思います。事業者と野鳥の会のような民間機関が協力しあうにはどうしていけばいいか、ご意見を伺えればと思います。また、実例があれば、教えて下さい。
    (講師より: 諸外国のアセスメントについて、各国のアセスメントで長短があると思いますが、複数案の検討により最適な案を見出すという意味では米国のアセスが一番しっかりやっています。洋上風力のアセスメントではセントラル方式(国がアセスの一部を実施する)を導入しているオランダのやり方も参考になります。
    野鳥の会が風力の事業計画に対して反対するケースは少なくないですが、風車の位置を変更する、問題が生じた場合に一時的に運転を停止して問題や対策を検討することを事前に約束しておく、といった対応で理解が拡がるケースはあります。ご指摘の通り、環境アセス制度は元来、環境汚染の未然防止をねらいとして制度が創られましたが、今後は事後の対応についても強化していくことが必要になってきます。現在、(特に不確実性が高い洋上風力について)その方向での制度改正が検討されています。
  • 風力発電所と太陽光発電所の立地については、地球温暖化防止のため、住民側も推進側であろうし、順調に導入が進められるものと思っていました。ところが、風力発電所の低周波音やバードストライク、また、太陽光発電所の土砂災害誘発の問題などから、順調にいかないこともあると少し思い直していました。今回、講義をお聞きし、迷惑施設という側面があることから、正に総論賛成各論反対の状況で、再エネ環境政策を推進することにおいても、紛争が生じることがある(多い)と改めて認識させられました。合意形成のために地域便益創出策を考えることは、私には「金」で解決を図るというイメージが強く、好ましいものではないという思いがありました。ただ、事業者と住民が充分な話し合いを経て、その地域で事業者が事業を推進していくときに、事業者が得る収益について地元住民に何らかの還元をし、共に社会・経済環境の改善を進めていくという「絵」が描けるということであれば、よいのではと考え直せると感じました。
    (講師より: ご指摘の通りお金を支払う形の地域便益については慎重な対応が必要です。特に事業計画の段階でトラブルや反対が発生した後に提案する場合(相互に信頼関係が構築されていない場合)、「お金で解決するとは何事か」といったさらなる反感や不信感につながるおそれがあります。再生可能エネルギーなどの発電施設の場合は、発電した電力を供給することがより理解を得やすい選択肢になることも考えられ、さまざまな選択肢を前提に議論することが重要です。)
  • 私が取り組んでいる開発事業と環境保護団体との合意形成に対して、影響低減、対話、便益(メリット)という観点で取り組むことが有効だと感じました。あとは事業者対応(誠意)の質・度合が重要なのかなと思いました。その辺の落としどころを探っていくプロセスが対話なのかもしれませんね。
    ・最後まで納得いただけない人との対応実例のお話は大変興味深かったです。誠意を尽くせば理解が広がり、反対側の方々が最後まで反対する方を説得する状況があるのだと学びました。すべての人が納得することは難しいと思いますので、そこが一つの終着点なのかなと思いました。
  • 最後まで反対した人が賛成したわけではないけれど受け入れた過程として、公正かつ丁寧な説明に加えて、反対派から態度を変えたメンバーによる説得があったというお話が印象的でした。また「意見が分かれることよりも意思決定に関与できることへの満足感」「いい点、悪い点を出し合って進めるというプロセスを経て決めていくということが満足感につながっていく」という質疑応答での回答もしかり。合意形成学を学べば学ぶほど、「合意とは何か?」「合意するということはあり得るのか?」という問いが増していきます。結局目指しているのは合意ではなく全員の納得なのではないかと。それには時間が必要で、決して急がず急かさず、知識や理解の差も丁寧に埋め、あらゆる観点を共有するプロセスをともにすることで、完全に合意ではなくても、受け止められる素地と関係性と、そのあとの未来をともに生きる共同体を作り上げているということなのかもしれません。
    ・どのような場づくりが効果的なのか、場づくりの留意点は何か、声が大きく耳を貸さない反対派がいるときにはどのようなアプローチをすべきか(特に感情やこれまでの因縁などを抱えてしまっている現場の場合や、また時間が作れない現場の場合)、など伺いたいことはたくさんありましたが、回を重ねるにつれて、それを伺うことがナンセンスな気持ちにもなり、、、モヤモヤしております。
    ・「事業者の前にまずは市民が自らの地域の電力供給をどうするのか、当事者として考えていないと成り立たない」という豊田先生の言葉も印象的でした。まさにそのようなスタートラインの場合、どのようにアプローチされるのでしょう?まずは町の課題を当事者として考える姿勢や学びの場づくりも、合意形成のプロセスに盛り込んでいらっしゃるケースがあればお伺いしたいです。
    (講師より: ありがとうございます。私自身も自分で話していてモヤモヤすることがあり、全てにクリアカットに説明・回答できずにおりますが、それが次に考える貴重な機会になっており感謝しています。上述の岩手県軽米町のケースは再エネ事業の話だけでなく、再エネビジョン(エネルギーについて考える契機を提供)についても併せて策定したケースとして参考になります。)


    (2023年度B「環境政策における合意形成」クラス、セッション2 にて)


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